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森林保全活動に参加した高校生へ [みんなの森]

昨日、僕は84歳のおじいさんと一緒に「山調べ」という仕事をしてきました。「山調べ」というのは、現代的にいうと「境界確認」のことで、山の所有者(山主)さん同士の境を確認して、自分の山の木に印をつけていく仕事です。けんちゃん(おじいさんのことはみんなはこう呼ぶのでこう書きます)は、中学を卒業後15歳からあちこちで仕事をしてきて、現在は僕と同じ林業家さんのところで働いています。竹屋、材木屋、ダンプの運転手、などいろんな商売を経験しているし、猟師として山でイノシシやシカ、熊を撃った経験もある山の大ベテランです。けんちゃんと山を歩くと、山の境を教えてもらうことはもちろんですが、いろんな仕事をした経験や、地域に伝わる昔話、イノシシなどの動物の生態の話、山で出てくる山菜やツルのことなど、いろんなことを聞くことができるのでとても楽しいです。正直、僕はどこも同じに見える山の境を覚えることよりも、けんちゃんのいろんな話を聞くことの方が好きです。
去年高校の森林保全活動に参加したすぐ後に、けんちゃんと日の出町の山に入った時に、「ここの山には怖い話があるんだよ」と言われました。なんのことだろう、と思ったら、「青梅の裏宿七兵衛のことは知ってるだろう。あの七兵衛が、一時期この山の中に潜んでいたことがあるらしい。昔はここから青梅の様子がよく見えたから、ここから見張っていたらしいぞ」と教えてくれました。けんちゃんもこの話は地域のおじいさんから聞いたそうです。ちょうど高校の近くにあった今は公園になっている裏宿七兵衛の屋敷跡を通って七兵衛のことを知ったばかりだったので、思わぬつながりにびっくりしました。
山調べでは、所有者の印をつけるのは、山の境に立っている木にその家の屋号を書くことになっています。スギやヒノキなど、山に植えてある木のデコボコした皮を少し削って、平らにしてそこに墨で漢字やカタカナ1文字ぐらいの屋号を書いていきます。スプレーで印をつけるのが楽ですが、「墨で書けば10年は消えねえよ」と教えてもらいました。「もう10年後は来られないから、林くんが歩けよ」と言われて、考えてみると今41歳の僕でも、仕事ができるのはせいぜい後20年~30年ぐらいのものでしょう。30年後には、次の世代に場所を教えて、その木を守ってもらわなくてはなりません。山の木が売れるのは、現在では最低でも50年ぐらい、長ければ、100年、150年という木もあります。つまり自分が20歳で仕事を始めたとしても、植えた木が売れる頃にはもう70歳、引退どきです。次の世代、その次の世代まで誰かが木を育ててくれることを見越して成り立っている仕事なのです。今「いい木だな」と見ている大きな木は、100年以上前の、けんちゃんよりももっと前の世代の人が植えてくれて、けんちゃんやその次の世代の人が手入れをして育ててきてくれた木です。林業、というのは、過去、現在、未来という時間を通して成り立つ、とてもおもしろい仕事です。

みんなが体験してくれた森林保全活動は、材木として売れる杉やヒノキを育てるための狭い意味での林業とは少し違いますが、山に必要な木を残して、不要な小さな木を伐って片付けて、山を綺麗にしていく、という意味では林業の体験でもあります。山とのかかわり、自然とのかかわりはいろんな形があって、観察したり、山登りをしたり、というかかわり方もあるし、木を伐ったり、草を刈ったり、木の大きさを調べたり、というかかわり方もあります。実際に林業の仕事にかかわる人はそれほど多くはないかもしれませんが、山で仕事ができる、こんな作業があるんだ、というの知っておくのはとてもいいことだと思います。日本では、現在でも多くの人が木造の家に住んでいるし、最近は木をいかした建築や薪ストーブが注目されることもあります。自分たちの家や家具に使われている木材がどういう仕事を経て、どれだけの時間を経てここにあるのか、というのを知ることには意味があると思うからです。それに、何より僕にとってはけんちゃんたち山の大ベテランの話を聞くのがおもしろいし、山の仕事を専門にしてきていない人でも、なんで山に関わるようになったのか、どんな生活をしてきたのか、いろんな話を聞くのが好きなので、山の仕事、山の活動にかかわっています。もっと多くの人が山の活動にかかわるようになるといいな、と思っています。
「林」という字は、「木を生やす=人が木を植えた場所」という意味がある、という説もあるそうです。今回の授業が、身近な木や自然に興味を持つきっかけになるといいな、と思っている林からのメッセージをこれで終わります。

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焼岩冒険の森コンセプト [みんなの森]

いい降りなので、みんなの森財団で頼まれていた原稿を書きました。
今年の夏にキャンプをやった冒険の森のコンセプトと今後の展開です。
何となく、ものがたり文化にも社会学にもつながっているなぁ。

焼岩冒険の森は、山の入り口に大きな岩があり、サワガニのいる沢や打たれるのにちょうど良い滝があり、スギ・ヒノキもありますが、広葉樹も多くはえている山です。基本的には、子どもたちが森林に親しむフィールドとして考えています。子どもたち、と一言でいっても山を駆け回れる子どももいれば、沢の水に手をつけることを怖がる子もいます。体を動かすだけではなくて、絵を描いたり、ご飯を食べるのが楽しみというのもありでしょう。はやりの言葉で言えば、「diversity(多様性)」をどう確保するか。「個性」や「生きる力」というキーワードを並べることは簡単ですが、現実社会のあれこれはなかなか自分自身を確立する間を与えずに流れ込んでくることは、みなさんも経験している通りです。冒険の森は、子どもだけではなく大人にとっても楽しめる場所にしましょう。
スギ・ヒノキだけではなく、さまざまな広葉樹が育つ山になれば、生き物の数も増えていくことでしょう。できるだけ森に来た参加者が自由に遊びを考えられるようなフィールドにしたいと思っています。そのためには、「さあ、遊べ!」というだけではなく、遊びの可能性をできるだけ多く提供できるようにしていきたい。森に入りやすくするための道づくりや、いくつかの遊びの可能性や休憩場所を提供したり、安全性の確保ができるような整備を進めていきます。
8月には3団体のキャンプがあり、沢や滝を中心に遊ぶことができました。実際に遊んだりテントを張って生活した感想を集めて、今後の整備や活動の展開につなげていく予定です。
みんなの森の第三週定例活動では、沢づたいの道整備、ボサ刈り、薪づくり、間伐、枝打ち、遊具づくり(ツリーハウス、ターザンごっこ、丸太アスレチックなど)を実施しています。
特に遊具づくりについては、専門のチームをつくって「山で遊ぶ」、ということについて勉強会をしながら、企画、実行していけるように考えています。みんなの森メンバーに限らず、今までのキャンプ参加者やツリーハウスをつくってみたい人などにも広く呼びかけて、9月中にチームを発足させたいと思います。興味のある方は林(shyo-1@pd6.so-net.ne.jp)までご連絡ください。

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